近年、キャリアの多様化が進む中で、従来の仕事の捉え方を超えた新しい働き方が注目を集めています。
その中でも「ジョブクラフティング」は、個々の社員が自らの職務内容を積極的にデザインするという考え方であり、キャリア戦略の一環として多くの企業でも取り入れられつつあります。
この新しいアプローチは、単に仕事をこなすだけではなく、仕事を自分の意欲や興味に合わせて形作っていくという点で、働き手にとっての自由度を大きく広げます。
ジョブクラフティングはどのようなものなのか、どのように自分のキャリアに活かしていけるのか、実際に取り入れるためのステップや成功事例を通じて詳しく解説していきます。
ジョブクラフティングとは?
ジョブクラフティング(Job Crafting)は、1990年代にアメリカの組織心理学者・エイミー・レッピンが提唱した概念です。
従来の仕事の枠組みでは、社員は上司から与えられた役割を忠実に果たすことが求められます。しかし、ジョブクラフティングでは、自分自身が職務内容を積極的に「デザイン」し、認識を変えていくことが推奨されます。
このアプローチは、単に「業務の改善」や「効率化」だけでなく、個々の社員が自分の強みや興味を活かせるような形で仕事を調整することによって、モチベーションを高め、生産性を向上させることを目的としています。
どのように仕事をデザインするのか?
ジョブクラフティングには、具体的に3つのアプローチがあります。
1. 業務内容の調整(Task Crafting)
これは、日々の仕事の中で自分の担当業務を調整することです。
例えば、新しいプロジェクトに参加したり、自分の得意分野を活かすことのできる実践方法を見つけるなど、業務内容を自分の性格や能力に合わせて工夫する余地を探りましょう。
2. 人間関係の調整(Relational Crafting)
ジョブクラフティングは、人間関係にも焦点を当てます。
自身が関わるチームメンバーや他部署の人々とどのように協力していくかを自ら分析することで、より良いコミュニケーションや協力関係を築くことができます。
3. 仕事の意味付けの調整(Cognitive Crafting)
最後は、自分の仕事に対する主観的な意味づけを変えるという方法です。
仕事に対する意識や視点を変えることで、例えば単調な仕事も自分の成長に繋がっていると捉え直し、仕事に対するモチベーションを高めることができます。
これら3つのアプローチを組み合わせることで、仕事を、自分の性格や価値観にフィットさせることができるというのが、ジョブクラフティングの考え方です。
ジョブクラフティングの実践方法
自分の強みと興味を見つける
ジョブクラフティングを成功させるための第一歩は、自分自身をよく知ることです。どんな仕事をしている時に最もやりがいを感じるか、どの業務が自分の強みを発揮できるかを考えることが重要です。
自己分析を行い、自分のモチベーションが高まる瞬間を把握することで、どの業務にもっと集中すべきかが見えてきます。
• 例えば、「数字を扱うことに強い興味を持っているが、普段はクリエイティブな仕事に時間を割いている」という場合、もっとデータ分析を担当する仕事を増やしていくことが一つの方法です。
• 逆に、「チームメンバーとのコミュニケーションを大切にしているが、管理職に押しつけられる業務に疲れている」という場合、他の部署との連携業務を積極的に調整していくことができます。
小さな変化から始める
ジョブクラフティングは一気に大きな変更を加えるものではなく、まずは小さな調整から始めることがポイントです。急激な変化を求めるのではなく、少しずつ自分が心地よく感じる状況を見出していくことが大切です。
例えば、現職で自分の強みを活かせるタスクを積極的に引き受ける、または、同僚ともっと密に連携するなど、少しの工夫を積み重ねていきます。
上司やチームメンバーとの対話を大切にする
ジョブクラフティングを進める上で、上司やチームメンバーとの対話は欠かせません。自分がどのような形で仕事を進めたいのか、どの業務に集中したいのかをしっかり伝え、理解を得ることが重要です。
特に、チーム内で役割を変更する際には、協力が必要不可欠です。上司との日頃のコミュニケーションを通じて、信頼関係を構築するなど、新しい業務を獲得するための足場を築きましょう。
ジョブクラフティングの成功事例

成功事例1:フリーランスエンジニアのジョブクラフティング
あるエンジニアのAさんは、初めは単なるプログラミングの仕事をこなしていたものの、次第に自分の強みや興味に合わせて業務を変えていきました。
Aさんはクライアントとの関係作りに強みを持っており、その点を活かすために、プロジェクトマネジメントやクライアントとのミーティングを増やしました。
その結果、技術的な仕事に加えて、クライアントとの調整やプロジェクト全体の設計にまで関わるようになり、仕事の幅が広がったと同時に、より充実感を感じられるようになりました。
成功事例2:企業内のジョブクラフティング
Bさんは、あるIT企業でエンジニアとして働いていましたが、次第にコーディングだけではなく、社内の改善業務やプロセス設計にも興味を持ちました。
上司と話し合い、その希望を反映させた形で自分の業務に改善提案やプロジェクト改善のタスクを加えることに成功しました。
その結果、Bさんはより多くの部門と連携するようになり、社内での認知度も向上し、キャリアパスも広がることになりました。
ジョブクラフティングを活用するための注意点
自己満足に陥らないようにする
ジョブクラフティングを実践する中では、独りよがりの状態に陥らないようにすることが重要です。
自分の強みや興味を重視するあまり、組織全体やチームの目標とのズレが生じることもあります。そのため、常に組織やチームの目標に対する貢献を意識しながら、業務内容を調整することが求められます。
急激な変化は避ける
ジョブクラフティングの過程で、あまりにも多くの業務変更を一度に行うことは、業務に混乱を招く可能性があります。自分が必要だと思う業務の調整を行うことは大切ですが、無理なく実行できる範囲で少しずつ進めることが成功の秘訣です。
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求人情報も企業が求めるスキルや経験が明確に設定されているので、自分に合った仕事を探せます。
まとめ
ジョブクラフティングは、自分の仕事をより充実させるための効果的な戦略です。自分の強みや興味を反映させながら仕事をデザインすることで、モチベーションを高め、生産性を向上させることが可能になります。
最も重要なのは、自己満足に陥ることなく、チームや組織全体の目標を意識しながら、少しずつ仕事を形作っていくことです。ジョブクラフティングを上手に活用することで、より良いキャリアのステップを踏むことができるでしょう。